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春婦伝
2007 / 08 / 08 ( Wed )
20070807100526.jpg

1965年 日本 日活
監督/鈴木清順
原作/田村泰次郎「春婦伝」
キャスト/ 野川由美子 川地民夫 玉川伊佐男 小沢昭一 初井言栄 松尾嘉代 他

中国の荒野をトラックが行く。日本兵の為に集められた慰安婦の一行である。その中に男に裏切られ自暴自棄の娼婦・春美(野川由美子)がいた。道中、春美は澄んだ目をした生真面目な三等兵・三上(川地民夫)に出会う。僻地の村に着いたその夜、娼館に大挙して兵隊達がやって来た。春美の相手は成田中尉(玉川伊佐男)。軍刀を振りかざす乱暴で傲慢を嫌いながらも、春美の肉体は成田を受け入れてしまう。その言いようのない憎しみから、成田の当番兵を勤める三上を誘惑しようとするが・・・―「Cinema Scape」を参考に―

ダニエル・シュミット監督の『書かれた顔』を見ました。虚構的ドキュメンタリーなんだそうです。坂東玉三郎の魅力を、本人インタビューや舞台と楽屋裏、他の“女”を演じる演劇人(杉村春子等)のインタビューや芸と交えてあぶり出す・・・。「黄昏芸者情話」が面白かったなぁ。坂東玉三郎が女女してて、宍戸開(濃いけどやっぱり可愛い♪)とのやり取りがかなり本気で驚きました。

以下、録ったまま放置している中からようやく見た『春婦伝』と、同じ原作である谷口千吉監督の『暁の脱走』(1950年)の感想です。『暁~』は、2月の池部良特集上映で見た時の記憶ですので、かなり適当かと^^;
初っ端から清順節が炸裂していました。野川由美子演じる春美が裏切られた男と対峙するシーンで、何故かバックは昇竜の壁画!春美の心境を演出しているのかな?しかし、あまりに露骨だ(笑)

野川由美子が良いですねぇ、生命力に溢れていました。女としてギラギラしている、そんな感じです。「色んな男に自分の体をぶつけてみたい」なんて擦れた事を言いながらも、結婚に憧れる娼婦仲間を心から応援するいじらしさも持ち合わせている。そんな娼婦・春美を好演していました。
相手役の三上三等兵を演じるのは、川地民夫。私の勝手な意見ですが、二重なのにちょっと腫れぼったい目が魅力的です。いやぁ!それにしても、ストイックで初々しい堅物がこんなに似合うとは思っていませんでした。・・・うん。今まで、胡散臭い殺し屋の彼ばかり見ていたからなぁ・・・^^;

ラブシーンが良かったです。いわゆる本番は全くないのに(せいぜいキスくらい?)、大変官能的に仕上がっていました。春美が三上の服を脱がすシーンとか、そういう前ふり?が凄く丁寧に描かれているからかも。
春美の健康的で奔放な色気に押されて、基本ストイックな三上が一瞬衝動的に・・・。その衝動への後悔に苛まれ、春美に胸で苦悩する三上がまた良かったです。清順監督も、男の弱さにエロスを求める傾向にありますねぇ。
そうそう、キスシーンがえらい綺麗でした。口を合わせたまま、彫刻か何かのように微動だにしない二人。少しも生々しくないのですが、初めて三上自身が春美を求めた記念的なシーンです。恋愛からか欲情からか、そこは私にははっきり分かりませんが、この二人は確実に惹かれ合います。それを表現するのに、これらのラブシーンはどれも必要不可欠だったように思えます。

三上の上官が嫌な奴なんですが、この玉川伊佐男演じる上官はただ暴力的って感じでした。『暁の脱走』の小沢栄演じる上官はもっと陰湿で、耐える三上の姿が更に痛々しかったです。水虫の治療とかさせられたような・・・。

他の娼婦の物語も、さりげないけど結構深かったです。
嫁入り道具(といっても夫婦茶碗等)を鞄に忍ばせていた娼婦が、現地の男の嫁に。「娼婦である女がどれくらい嫁に行く事を夢に見ているか・・・」と、他の娼婦も心から祝福します。しかし・・・。
朝鮮人の娼婦もいて。そこに本を読みに行く宇野一等兵に、「日本人と娼婦と同額のお金を払ってくれる・・・」と喜んだり。
ラスト、朝鮮人の彼女が「死ぬなんて!」と怒り、これからも生き続ける娼婦達が映され、映画も“終”となります。三上と春美の恋愛?を通して、実は彼女達のこの姿を描きたかったのかもしれません。

三上と春美のラスト。軍人の誇りなんてなんのその!捕虜になろうと脱走する事になろうと、とにかく「生きるのよ!」と強く主張し続けた春美が、どうしても死を選ぼうとする三上の姿を見て、共に死のうとする。手榴弾を持つ三上を上から抱き締める春美。三上も初めは抵抗し一人で死のうとするけど、遂には・・・。この瞬間、この二人は本当に結ばれたのでしょうか。ただ、ここまで三上を追い詰めたのも春美です。女の情念は戦争をも凌ぐ、こんな感想は的外れでしょうか。戦時下の哀しい恋ではあるけど、戦時下だからこそ燃え上がった恋であったと思いました。



『暁の脱走』(監督/谷口千吉、脚本/黒澤明)

暁の脱走 暁の脱走
池部良、小沢栄 他 (2004/09/25)
東宝

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大筋は、『春婦伝』と全く同じ。三上を演じるのが池部良で、春美を演じるのが李香蘭こと山口淑子で、三上の上官を演じるのが小沢栄(小沢栄太郎)。ただ春美は娼婦ではなく、確か慰安歌手という設定でした。夫は戦死していて、憎しみからでなく純粋な愛から三上を・・・。演じるのが山口淑子という大スターですし、大胆な描写よりも、美しくも哀しい恋の物語を前出しにしたかった所為でしょうか。時代もあったかもしれません。あと、展開も結構淡々をしていたように思います。

さて。実は私、この映画をかなり驚愕の目で見ておりました。なんちゅー女だ、と。私の目には、山口淑子の演じる春美は野川由美子の春美より、ず~っとず~~っと情念の塊でした。夫を亡くした年上の女が女性経験のない若い男を、己の愛欲の為に破滅へ導く・・・。そういう風にしか見えなかったのです。こうなると駄目です。「あの人(三上)を私のものにするわ!」発言にも、当時まだ珍しかったであろうキスシーンにも、捕虜の時の妻のような振る舞いにも、全てに反感というか・・・。とにかく美しく哀しい恋物語には思えなくて。ただただ、この女ってば凄いなぁ・・・と。

20070807185905.jpg

キスシーンは確か俯瞰の至近距離で、大変美しかったと思います。が、山口淑子の顔は派手な上に池部良の倍ほどの大きさがあり、それは本当に取って喰うかのようなキスシーンでした。あと、その迫り方が私の目には肉感的で。ブラウスから透けるブラのラインに、勝負!の意気込みを感じます。
一番強烈だったのが、堅物の三上を色仕掛けで陥落させた後、もう私のものよ!とばかりに「三上!三上!」と呼び捨てに。凄い、凄過ぎる・・・。同性から一番嫌われるタイプですが、勝てば官軍。その徹底した姿勢は嫌いじゃありません。

20070807185931.jpg

二人のラストは、『春婦伝』とはちょっと違います。私はこちらの方が好きです。
手を取り合って逃げる二人を、兵隊達は誰も撃てません。業を煮やした小沢栄の上官が、自ら機関銃を持ち撃ち殺します。多分先に春美が倒れて、その後に三上だったと思うのですが、死の瞬間、三上の中に春美はいなかったような気がします。ただ汚名への苦しさとか憤りとか、そういう兵隊としての無念だけがあったように映りました。


三上と春美。この二人の間にある感情は、いわゆる恋愛なんでしょうか?『春婦伝』にしても『暁の脱走』にしても、春美は女の持てる全てで三上にぶつかっているって感じですが、三上はただそれに流されているだけに思えます。戦時下において、兵隊として死んでゆかなければならない三上と、女として報われたい春美とでは、その感情にかなりの温度差があって当然なのかも。そして、この行き違っているところに惹かれます。だって、そこが美しいかはともかく、一番哀しいから・・・。
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